ホーチミン旅行で、一番のお楽しみイベントにしていた「メコン川クルーズ」。
現地ツアーに参加してみたところ、最初に向かったのはココナッツ工場(ツアー会社によっては先にメコン川ツアーをするらしい)。
ココナッツ工場の後、フレッシュ蜂蜜のサービスがあって、ブンブン蜂がいる中その蜂蜜をいただいた。軽く書いているけど、周りに小さなハエじゃなくて蜂が飛び交って本当はすごく怖かった。
ほら、これ。座っっている席の目の前で蜂の巣?枠?をガイドさんが手に持っている。

「持ちたい人ー」って、言われて韓国の小学生くらいの女の子が果敢に持っていた。すごい。
私はテーブルに寄ってくる蜂を避けるのに必死。
なぜって、ハチミツ茶をサービスされるらしく、蜂蜜の香りに寄せられてテーブルに置かれたコップ付近にもハエじゃなくて蜂がいる・・・。もちろん目の前にも飛んでくる。思わず席から離れてしまう。

もちろん周りの人はのんびりと楽しんでいる。のんびりとと言っても、メインのクルーズがまだだから、余興の感は否めないのか、「次はまだかなー」と思っている雰囲気がある。
相棒が美味しいというので、怖いけどせっかくだから席について飲んでみることに。
「甘い、美味しい!」
ジャスミンティーにフレッシュな蜂蜜を混ぜたお茶。とても気に入った。周りに蜂がいなければもう1杯おかわりして飲みたいところだったけど、落ち着いて飲めないのが悩みどころ。

そりゃ、こんなに美味しいんだから蜂も食べたいよね。いや待てよ。そもそも、蜂ってなんで蜂蜜が好きなんだろう?
ホーチミン旅行記を書くにあたってふとそんなことを思いついた。
気になって調べたら、蜂にとって蜂蜜は甘い“おやつ”じゃなくて、飛ぶためのエネルギー源であり、冬や雨の日の保存食でもあるらしい。人間でいうお米やパンみたいな命の燃料。
そもそもふつう働き蜂は花の蜜や花粉を食べるけど、蜜が糖分で花粉はタンパク質やビタミン・ミネラルとして摂取。
でも花の蜜は水分が多くて腐りやすいから、蜂はそれを持ち帰り、仲間に口移しで渡しながら「インベルターゼ」という酵素を加え、ショ糖をブドウ糖と果糖に分解し、羽ばたいて水分を飛ばして濃縮する。
ちなみにこのインベルターゼという酵素とほぼ同じ働きをする酵素は他の植物や細菌などさまざまな生き物がもっていて、パン酵母なんかもそう。でも、インベルターゼというのは固有の酵素名じゃなくて総称でそういう役割(ショ糖をブドウ糖と果糖に分解する)酵素をもっているというだけで、分子構造レベルになると違うから全く同じものというわけではないんだけど、大きくいえば人間も持っているらしいのだ。
人間が持つのは「スクラーゼ」という別のタイプの酵素で小腸の壁にあるんだって。なんか生物とかで習ったようなフレーズ・・・。
話が逸れたけど、このインベルターゼを使って保存用の腐りにくい蜂蜜が完成する。
唾液に含まれた酵素を密に含ませて分解させながら巣に戻り、その分解されたものを別の蜂に口渡しし、さらに酵素を加える・・・・。こうして徹底的に花の蜜にある少ないショ糖(砂糖の主成分)を、ブドウ糖と果糖という成分に分解していく。
しかも口移しを繰り返すうちにハチの体温で蜜が温められ、だんだんと水分が蒸発し、粘度があがって濃厚な蜂蜜となっていくのであった!すごい!
メープルシロップのように、人間がカエデの木の樹液を採取し、煮詰めて水分を飛ばして作るって工程を蜂がやっているんだなぁ。先住民が蜂の真似をしたのかもしれないね。
ただ、蜂蜜作りの過程でちょっと疑問が湧いたのが、
「口移し?唾液?」ってこと。
ちょっと、汚いかも。すぐにそう思ってしまうのが私の悪いくせ。
そんなこと言い出したら色々時になるのがあるんだろうなと思いつつも安心材料を探すと、
蜜をためる「蜜胃」ということろがあって、そこは消化用胃とは別で汚れとは混ざらない専用タンクで汚くない。それに、蜂蜜自体に抗菌作用があるから腐らないというから気が晴れた。
そもそも蜂がせっせと一生懸命運んだ備蓄のエネルギーを食べておいて汚いなんておこがましいにも程がある。反省。
ちなみに、蜂蜜が腐らない理由は、水分が少なすぎて微生物が増えられない、糖分濃すぎて菌の水分を奪う、酸性(pH3〜4)で多くの菌が増えられない、さらに グルコースオキシダーゼ という酵素が生成する微量の過酸化水素が菌の繁殖を抑える。天然の防腐剤入り食品みたいなもので、ピラミッドから出てきた蜂蜜が数千年経っても食べられた例まであるらしい。
しかも蜂蜜は薬にもなる。喉が痛いときには咳止めになり、傷ややけどに塗れば治りが早い。腸内の善玉菌を増やす整腸作用や、疲労回復にも役立つ。美味しくて、保存できて、薬にもなるなんて、蜂、怖いけど、すごい存在感。
蜂蜜なんて何度も食べているのに、初めて蜂の中に飛び込んで(といっても、ただテーブルの前に座ってただけだけど)、やっと蜂蜜の真の凄さを実感できたのだった。