世界遺産「ロンドン塔 Tower of London」。外壁は灰色の石灰岩で頑丈に作られている中世の城塞です。
実際に1回行ってみたところ、不思議な空間にすっかり魅了されました。私はその後2度(それぞれ別の年)も再訪しました。
ロンドン塔といえばカラスが飼われていることも有名です。初めていった時にそれを知らず、不気味に思いました。しかし、実は居なくてはならないカラス達だったのです。
もくじ
ロンドン塔とは
入場時にもらえる冊子には、各国の言葉で説明してあります。
ロンドン塔はクラウン・ジュエルズを守る1000年の歴史を持つ古い城です。 それは堅固な砦であり、王家の宮殿であ り、忌まわしい監獄でもありました。王たち、女王たちはここから彼らの権力を示し、それによって社会を形成し、 私たちの世界に影響を与えたのです。
ロンドン塔公式ガイド
と、日本語で書かれています。王家の宮殿と監獄、正反対のような場所であるロンドン塔。そのキャッチフレーズだけでも興味をそそられるのではないでしょうか。
なぜ塔なのか?
By CC BY-SA 3.0, Link
ロンドンで単に「塔(the Tower)」というと、このロンドン塔を指します。どう見ても城なのに、なぜ塔という名が通っているのでしょうか?
最初に建てられたのはホワイトタワーというものです。11世紀にイングランドを征服したウィリアム1世によって建てられました。その後、その時代の王達に増改築されていきました。
実は、塔や館、礼拝堂など混合した建物は、17世紀までは王宮だったのです。元々が塔で、どんどん城のように大きくなっていたということなんですね。今でも公式には、女王(国王)陛下の宮殿にして要塞(Her (His) Majesty’s Royal Palace and Fortress of the Tower of London)と称されます。
ロンドン塔がある場所
ロンドンの有名観光スポット「タワーブリッジ」のすぐそばにあります。
London EC3N 4AB イギリス
地下鉄タワーヒル駅から5分
地下鉄モニュメント駅から10~15分
ロンドン・ブリッジ駅から10~15分
リバプール・ストリート駅から20分
ロンドン・チャリング・クロス駅から25分
営業時間はシーズンによって異なります。コチラ(英語)でご確認ください。
ロンドン塔にいるカラスの役割とは
占い師に「もし、このカラス達がこの塔を去っていったら、塔だけでなく英国は滅びるだろう・・・」と言われ、チャールズ2世が大事に育てるよう主張したとされています。
古くからの言い伝え
‘IF THE RAVENS LEAVE THE TOWER, THE KINGDOM WILL FALL…’
ロンドン塔公式ページ
それからずっと現在でも、大事なロンドン塔ひいては英国の守り神として大切にされているのです。6羽は常駐してないといけないと言われていて、今では9羽のカラスがいます。常に、6羽の他に予備のカラスを育てているようです。赤ちゃんが産まれたりするので合計数は年によって変わります。
THE LEGEND OF THE TOWER RAVENS
It is said that the kingdom and the Tower of London will fall if the six resident ravens ever leave the fortress. There are nine ravens at the Tower today.
カラスのいる場所
初めて見たのはロンドン塔の周辺でした。このカラスが飼われているカラスか、野良のカラスか分かりませんが、飼われているカラスも放し飼いになっていて、基本的には紐などがついているわけではありません。
塔内に入ると、このように柵に止まったカラスちゃん達を間近で見ることもできます。
© User:Colin / Wikimedia Commons, CC 表示-継承 4.0, リンクによる
「Jubilee」と「Munin」です。
可愛がられているだけあって、それぞれのカラスに名前がついています。でも、この写真をよく見てください。左足に色の違うタグがついています。「カラスの見た目で判断しているなんてすごいなー」と思いきや、タグで見分けられているようです。
自由に飛び回れるので、芝生などに降りて餌を探し歩き回り、日が暮れる頃には飼育係り(レイヴンマスター Ravenmaster と呼ばれる)に部屋に戻るように呼び集められます。
カラスのお食事
カラスちゃん達のお食事処としてこのゲージが使われています。1日2度は餌をやります。
By – originally posted to Flickr as P80500491-The Tower of London, CC BY 2.0, Link
カラスは「スカベンジャー(scavenger)」とよばれる動物で、自然界の掃除人(人じゃないけど)です(自然界は本当に良くできているなと思わせてくれます。)ので、芝生などで食べられる物では満足させられないのでしょう。
ひよこ、マウス、時には好物のウサギ丸ごと(毛皮や骨も好きだから・・・)などの肉をあげるそうです。
なぜ遠くに逃げていかないのか?
しっかりと餌付けして、居なくならないようにしているのでしょうね。と、思っていたのですが・・・
実は、長く飛ぶための羽を取られているそうです。それで短い距離しか飛べないというわけでした。若干無理やり塔にいさせようとしているところが、可愛がっているように見えて、実は閉じ込められている感じがします・・・。
それほど、言い伝えが怖いのでしょうね。
公式ページには、塔に留まるように促すために、初列風切羽(しょれつかざきりばね)と次列風切羽を切り取っているとあります。風切羽は1列に並んだ羽のことで、体に遠い外側から「初列風切羽」、「次列風切羽」、「三列風切羽」とあります。自然にいる鳥でも、傷ついたり抜けたりすると飛べなくなる事もあります。
The Ravenmaster occasionally trims some of the ravens’ primary and secondary flight feathers to encourage them to stay at the Tower. All the Tower ravens are able to fly but, with careful feather management, plenty of food and a comfortable new enclosure, they are happy to call the Tower their home.
WHY ARE THE RAVENS’ WING FEATHERS TRIMMED?
その羽がないけれど、残った羽はケアされ、食事も満足にできているので幸せそうに塔に戻ってくると書かれています。それでも、過去には遠くに行ってしまうカラスもいて、グリニッジ天文台があることで有名なGreenwichまで飛んで行って、1週間後に塔に戻してくれた人がいるそうです。
ロンドン塔からグリニッジまで車で1時間くらいです。
長く飛べなくなったカラスだとどのくらいかかるのか分かりませんが、やっぱり遠くに行きたいんでしょう。戻されたくなかったかもしれないですね。
最後に、親ガラスが4匹の赤ちゃんに餌をやっている動画でなごみましょう。やや、恐竜の赤ちゃんかと思わせてくれる鋭いクチバシがちょっと怖いですけれど・・・。ちっちゃい頃からカーカーカーカーって鳴くんですね(笑)
解説している方は、カラスの飼育をされているクリス・スカイフ(Chris Skaife)さんです。
この方、ヨーマン・ウォーダー(ロンドン塔の護衛兵 The Yeomen Warders )もされているので、観光客にとってもは、ハット帽を被って制服を着ていらっしゃる姿の方が馴染みがあります。
カラスってかしこい
ロンドン塔のカラスじゃないのですが面白い動画を見つけました。
ネズミに餌を分け与えているのか、それとも隠したパンが取られたのか。私はカラスは賢いので餌を与えたに1票です。
そしてこっちの動画では完全に賢さをアピールしています。8番目のボックスに食べ物があって、長い棒で取らないと取れないのですが、その長い棒は1の短い棒を使って7番目のボックスから取る必要があります。
それを見事に成し遂げたという動画です。